Sloanの学生はどんな一週間を送っているのか? ある一年生の一週間のすごし方をご紹介します。(2008年春学期)
はじめに
春学期後期の私のある一週間(4月の終わりから5月初め)をご紹介します。
私の週間クラス・スケジュール (2008年度の1年次春学期後期)
時間割は、春学期を通じて受講している2科目(Strategic ManagementとFinance II)と、この後期だけ受講している2科目(Intro to Operations ManagementとGlobal Strategy & Organization)の4科目だけで、かなり緩めです。授業に出るだけなら、学校には週3回行けばよく、週休4日となります。ただ、長い長い冬が過ぎ、やっと動きやすくなるこの季節は、そんなもったいない過ごし方もできません。私はビジネスモデルコンテストやちょっとした「会社」の運営などに手を出しておりました。
Mon | Tue | Wed | Thu | Fri | |
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8:30-10:00 | Strategic Management |
Strategic Management |
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10:00-11:30 | Finance II | Finance II | |||
13:00-14:30 | Intro to Operations Management |
Intro to Operations Management |
Intro to Operations Management |
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14:30-16:00 | Global Strategy and Organization |
Global Strategy and Organization |
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16:00-17:30 |
日曜日
時間 | 行動 |
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8:00 | 起床、朝食など |
10:00 | ショッピング。食材、日用品などを仕入れる |
12:00 | 昼食 |
13:30 | 予習。授業は月曜日と水曜日にほぼ集中させているため、月曜日向けの予習はそれなりの量になるが、この日の予習はほぼIntro to Operations Management(以下、Operation)に集中。他の授業の予習を前もってやってあったということもあるが、それ以上に、この授業の目玉の一つであるオンライン・シミュレーションがこの週に行われるため、その準備をしなければならない。シミュレーションは、ウェブサイト上におかれた仮想の工場を運営し、3つある工程それぞれへの設備投資、原材料発注量とペース、生産上のロットサイズなどを操りながら、140日(シミュレーション上の1日=実際の1時間)ほどの稼動を通じて収益(=手持ち現金)の最大化を目指す、というもの。この日の17時から開始されるシミュレーションを前に、授業で習った稼働率、適正原材料在庫量、適正原材料発注量などを算出する公式を駆使して、与えられた情況から最適なインプットを導き出すエクセル・モデルをしこしこと作る。いかにもSloanらしい予習 |
16:30 | 昼寝から起きてきた娘とおやつ |
17:00 | シミュレーション開始。満を持して、手塩にかけたエクセル・モデル君が提案するだけの機械を買い増しラインに投入。材料発注量も操作する。1時間ごとに状況(特に顧客からの発注量)がかわるので、18時まで待って新しい情報をもとに多少修正 |
18:30 | 子供と入浴、家族で夕食 |
20:30-27:00 | さらにOperationのシミュレーションに戻る。本来、ずっとパソコン画面に貼りついていたからといって何かできるようなシロモノでもないのだが、最初は積み上がった顧客からの発注をとにかく捌かなければならないのと、エクセル・モデル君が25時頃に大きなオペレーション変更を指示していたので、それまでは寝るわけにいかない。ブログを書いたり、一杯やったりしながら粘る |
月曜日
時間 | 行動 |
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7:30 | 起床後も、やはりシミュレーションがどうなっているかが気になる。パソコンをチェックしてみると、そこには信じられない光景が…。原材料の発注量を一桁少なく誤入力していたらしく、工場は材料切れで暫く停止してしまっており、その間に顧客からの受注残が積み上がり、資金はみるみる減少していた。朝から気が滅入るが、出来る限りの応急処置をし、朝食をとって登校 |
8:30 | 1限目はStrategic Management。 太陽電池の会社のケースを題材に、これもまたSloanのある教授が独自開発したモデルを使って、価格設定、研究開発投資の多寡でどれだけ市場が拡大するか、自社がどれだけの累積利益を得られるかをシミュレーションし、その結果を討議する、というもの。3日前の金曜日に2人のチームメイトと議論した内容から新しい発見があまりなく、授業中はOperationのことばかり考えていた |
10:00 | 2限目はFinance II。 床に寝ながら教える名物教授Paul Asquithの授業。ケース方式で、Valuationをやるのが中心。この日は化学会社(だったと思う)のケースで、プロジェクトのNPV評価にReal Optionをどう織り込むか、というもの。この授業は春学期で最も面白かった授業の一つ。どれだけ真剣に予習して行っても、必ず新しい発見があり、刺激がある。ただ、教授がパワーポイントを極度に嫌うため、彼が話した内容をTeaching Assistantがひたすら黒板に書き、それを我々がノートに写さなければならない。終わると腕がだるい |
11:30 | 昼食。近くのフードコートでランチボックスを買ってきて頬張りながら、シミュレーションの状況改善につとめるが、一向に好転せず |
13:00 | 3限目はIntro to Operations Management。 その名の通り、Sloanで2年目に豊富に用意されているOperation系の授業の導入コースで、ケースと講義を織り交ぜつつ、基本的なコンセプトを学習する。今週は、受講生がシミュレーションで手一杯なのを考慮し、予習のいらない講義形式の授業。この日は各種の生産管理手法について概略的に触れる |
14:30 | 4限目はGlobal Strategy and Organization。 ケース方式で、その名のとおりグローバルな経営課題について議論する。この日はP&Gの洗濯用洗剤(ウルトラ・アリエール)の欧州での立上げに関するケースで、欧州統一ブランドとして価格やサイズの設定を統一するべきか否か、が大きな論点 |
16:00 | 自習。Operationのシミュレーションを横目で見ながら、Global Strategy and Organizationの次のケースを読む |
17:30 | 日本人MBA留学生のグループインタビューに参加。某投資銀行が雇ったボストンのリサーチ会社が、学生の進路選択における投資銀行のポジション、各投資銀行に対する印象や、今後出す予定の広告物(案)についてのフィードバックなどを聞いてくる。2時間ほど質問にこたえて、バイト料200ドル |
21:00-25:00 | 帰宅後、夕食、入浴、水曜日の予習。 Operationのシミュレーションは如何ともし難い状況になり、かなりやる気なし。Strategic Managementの予習だけやって終了 |
火曜日
時間 | 行動 |
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8:00 | この日は授業がないので遅めの起床、朝食 |
9:30 | 長女を連れて妻が英会話のクラスに出かける間、次女をみながら次の秋学期の授業を多少研究 |
12:00 | 卒業を迎えた日本人2年生による、次の秋学期の授業についての非公式説明会が開催されたので、参加。まだ4月末ながら、次の9月のことを考え始めなければならない |
13:00 | Strategic Managementの明日のケースについて、チームメイトと議論。原則1時間で終わらせる、と決めている彼らとのミーティングは9割方1時間以内で終わり、しかも議論しながら一人がタイプしたメモがそのままレポートになるので、極めて効率的 |
14:00 | 図書館で自習。Finance IIの予習。毎回レポートを提出しなければいけないこの授業、今回は他のチームメイトがレポートを書いてくれることになっているが、毎回自分でも課題を解いてみることにしているので、それなりに時間が必要 |
18:30 | 子供と入浴、家族と夕食 |
20:30-25:00 | Operationのシミュレーションを時々みながら、ビジネスモデルコンテスト「100K」の二次審査に提出するプランを練る。ビジネスモデルの詳細設計や、収益計画の骨組み作り。二次審査向けのレポート提出期限は2日後 |
水曜日
時間 | 行動 |
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7:00 | 起床、朝食、登校 |
8:30 | 1限目はStrategic Management。 この日はディズニーを題材に、企業の多角化の是非、シナジーの有無について議論する。ケーススタディというのは、当然ながらある企業の過去の取り組みについて議論するので、ディズニーほどの有名な企業で、多角化戦略が成功したかどうかを多くの学生が知っている場合、現実に引っ張られてフェアな議論になりにくいのだが、米国人を中心に、朝からよくしゃべる |
10:00 | 2限目はFinance II。 Congoleumという床材の会社のケースで、LBOについて学ぶ。題材は、かつての税制の隙を突いた先駆け的なLBO案件で、非常に面白い。しかし毎度のことながら、宿題として取り組んだValuationは、教授の模範解答と結構差がある |
11:30 | 昼食 |
13:00 | 3限目はIntro to Operations Management。 この日は工程改善についての講義。漸進的な改善と、抜本的な改善(リエンジニアリング)のそれぞれについて、基本的な切り口のタイプを学ぶ。シミュレーションは継続中。授業の前後の学生の会話は、7割方がシミュレーション関係となる |
14:30 | 4限目はGlobal Strategy and Organization。 この日はアルゼンチンのソフトウェア会社が、業容拡大のためのエンジニア獲得を目指してロシアのソフトウェア会社を買収する、というお話が題材。それぞれの組織のあり方、グローバル戦略の中での被買収企業の位置づけ、買収後のマネジメントなど、一連のイシューが盛り込まれた、なかなか良いケース |
16:00 | 図書館で自習。翌週の授業のケースを読む |
19:00 | アパレル製作会社「Sloangear」の引継ぎミーティング。SloanおよびMITのロゴ使用のライセンスを受け、その名の通り所謂スローン・グッズを企画・販売する会社で、代々スローンの学生が株式を売買するかたちで引継ぎ、運営している。私は9人の同級生とこの企業の買収に入札し、落札。そしてこの日、先代オーナーグループ(=現2年生)と正式な売買契約書のサイン、落札金額の支払い、諸々の引継ぎを行うミーティングを迎えていた。全員が契約書にサインし、新CEOとして旧CEOと握手。感動の瞬間 |
21:00 | こういうときには一杯やりに行くのが日本人のやり方。なかなか米国人やラテン系はついてこなかったが、もう一人の日本人メンバーと、マレーシア人のメンバーと、3人で祝杯をあげに行く。生ビールがぶ飲み |
23:00-25:00 | 帰宅後はシャワーを浴びてさっさと就寝 |
木曜日
時間 | 行動 |
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8:00 | 火曜日と同じく、この日は授業がないので遅めの起床、朝食 |
9:30 | この日は「100K」の二次審査向けレポートの提出日。夕方5時の締め切りまで、これに集中することに決定。 午前中、長女を連れて妻が英会話のクラスに出かけるのを見送り、次女をあやしながら収益モデルを完成させる。ビジネスモデルそのもの、様々な調査や試算の結果得られた将来予測、製品開発スケジュールなど、チームがこれまで検討してきたものを数字に翻訳し、齟齬がないように向こう5年間の収支計画にまとめる |
12:00 | 午後、妻が帰宅し、娘二人を連れてランチ会に出かける。 私は同じ寮にすむチリ人のチームリーダーとミーティング。収支計画から逆に得られる事業展開上の示唆を議論し、レポートに反映させる |
16:00 | ちょっと休憩 |
17:00 | Japan Clubのミーティング。議題は来期活動のための資金集め |
18:00 | 帰宅し、入浴、夕食 |
20:30-25:00 | 来週のGlobal Strategyのケースを読む。その後、明日に控えた「Sloangear」の新チーム初売りに向け、宣伝物など諸々の準備 |
金曜日
時間 | 行動 |
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7:30 | 起床、朝食 |
9:00 | Global Strategyのチームミーティング。翌週月曜日に扱うZaraのケースについて、与えられた課題に沿って議論。この授業のチームは、オーストラリア人、スペイン人、ウルグアイ人、トルコ人、そして私と、米国人抜きの多国籍チームで、議論はときどき発散するが、予想外の意見が出てきたりして、面白い。 |
10:00 | Japan Clubのミーティング。各サブチームからの年間行動計画の報告 |
11:30 | この日唯一の授業、Intro to Operations Management。 この日はスローンの卒業生で、ソフトウェア会社の経営者である某氏を招いての特別講義。Operation系の授業で学んだ統計的手法によるプロセス最適化を実践に取り入れ、営業効率やエンジニア稼働率の劇的な改善と企業の急成長を成し遂げたお話を伺う。授業で学んだことを実地でやってオカネが儲かりました、というほど、説得力のあるものはない |
13:00 | オーバーランチで、「Sloangear」のセールスに向けた事前打ち合わせ |
14:00 | 新生「Sloangear」チームの初売り。 この日は今年の秋からの入学を認められた人々(to be Class of 2010)を集めてのイベントがあり、その集客を当て込んでの営業。とはいえ2日前に会社を引き継いだばかりであり、この日に向けて在庫を仕入れる時間もなかったため、販売したのは旧チームから引き継いだ売れ残り在庫。色やサイズが不揃いで、思うように売れないが仕方ない。これから1年の活動に向けたチームの士気高揚と、当面の運転資金稼ぎが大事 |
17:00 | 店じまい後、売れ残り商品をチームメンバーのトラック(彼はトラックで通学している)で自宅の倉庫に運び入れる |
18:00 | 帰宅し、入浴、夕食 |
20:30-24:00 | Finance IIの課題(Valuation)に取り組む |
土曜日
時間 | 行動 |
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6:00 | 早めに起床、朝食 |
7:30 | 自動車運転免許取得のための路上検定に家族で出かける。米国に来て早々に受験したが、見事に不合格となり、そのまま放ってあったもの(厳密には、国際免許証で3ヶ月以上運転するのは、マサチューセッツでは違反)を、夏のインターンを前にいよいよ免許取得が必要になり、妻共々受験を申し込んだ。無事、二人とも合格 |
10:00 | 帰り道に、ちょっとショッピング |
12:00 | 昼食 |
13:00 | 子供が昼寝をしている間に、来週の「100K」二次審査プレゼンテーションの資料作成 |
16:00 | 子供と遊ぶ |
18:00 | 入浴、夕食 |
20:30-25:00 | ブログの更新 |